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フィスコ投資ニュース

配信日時: 2025/09/29 12:45, 提供元: フィスコ

ゼンムテック Research Memo(5):VDI市場834万人に対し、「置き換え」と「共存」の両面でアプローチ

*12:45JST ゼンムテック Research Memo(5):VDI市場834万人に対し、「置き換え」と「共存」の両面でアプローチ
■ZenmuTech<338A>の成長戦略

1. 情報漏洩対策ソリューション「ZVD」
ZVDの主要市場は日本国内のホワイトカラー層であり、その人口は約2,700万人と推定される。そのうち、ZVDの潜在対象市場となるVDIユーザーは834万人である。現在のZVDユーザー数は11万人にとどまっており、成長余地は大きい。同社は、5年以内に国内VDIユーザーの5%(約42万人)を獲得することを目標に掲げている。

成長戦略の柱は、VDI市場における「置き換え」と「共存」の両面展開である。VDIは高いセキュリティを持つ一方で、通信依存度の高さやサーバー・ネットワークの逼迫によるパフォーマンス低下、さらにインフラ投資コストの重さといった課題があり、ユーザーの不満が高まっている。ZVDの低コストかつ通信依存の低さを訴求して、置き換え需要を取り込む。さらに、2025年にサービス提供を開始したVDIとの共存であるZLEを推進する。VDIを使ったままZENMU-AONTを導入できるため、PCの更新タイミングに依らず短期間での導入を実現するとともに、将来的なZVD通常版への移行も期待できる。VDIやDaaSの販売実績が豊富なSIerなど販売代理店網を拡大し、販売力を強化する。

さらに、同社は非VDI市場も視野に入れている。これまでPC内のデータ保護ニーズはあるものの、コストや運用負担の大きさから対応が進んでいなかった。そこで、ZVDの低コスト・簡便性を訴求し、中小企業や会計事務所などを顧客とする中堅SIerや販売代理店を通じて、新規顧客獲得を図る。

また、カスタマーサクセス活動を通じてリテンションとアップセルにも注力する。ユーザーサポートを強化するとともに、利用ノウハウをユーザー間で共有できるプラットフォームの導入を予定している。将来的なロードマップとしては、複数の異なる端末でも対応できる「秘密分散ストレージ」製品の開発を計画している。通信環境の飛躍的な進化を踏まえ、PC内ではなくクラウド上のデータを秘密分散で保護することを目指す。さらに、デバイス管理・バックアップ・認証など他社セキュリティ製品との連携を拡大し、総合的なセキュリティ強化を進める。2024年12月に設立されたトラストセキュリティコンソーシアムへの参加も、この連携戦略の一環である。


アライアンスパートナーとの連携強化・拡大により適用領域を拡大

2. 秘密分散ソフトウェア開発キット「ZENMU Engine」
ZENMU Engineの適用領域は幅広く、映像等データ配信やブロックチェーンの認証強化、クラウドやIoT機器のデータ保護強化に活用できる。IoT機器とは、ウェアラブル端末、車載カメラ、ドローン、家電などであり、ZENMU-AONTの技術を組み込むことで、各機器内のデータや転送中のデータを保護する。

これらの市場規模は大きく、例えば車載データ保護・管理分野は2030年に世界市場で約319億ドル、ブロックチェーン分野は2025年に国内市場で約7,247億円、防犯カメラ内のデータ保護は2026年に世界市場で約6.4兆円、ドローン内のデータ保護は2028年に国内市場で約9,054億円と推定されている。

ドローン市場では、アライアンスパートナーであるネクストウェア<4814>及び(株)アイ・ロボティクスと共同で、ドローンや移動型ロボットに搭載する「インテグリティ・ドローン」技術の実証実験に成功した。これは、ドローンが予期せぬ落下などの事故を起こした際に、自律移動用プログラム、飛行経路情報、撮影データといった機密情報が漏洩するリスクに備え、データを瞬時に無意味化する技術である。

また、2025年6月には、医療AIプラットフォーム技術研究組合(HAIP)に組合員として参画した。同社の秘密分散技術を医療AIプラットフォームのサービス事業基盤や開発基盤に適用し、業界共通の基盤技術の研究開発を一層加速することが期待される。

同社は複数のプロジェクトを同時並行で進めており、既存パートナーとのアライアンスを強化しながら商品リリースに向けた伴走支援を継続する。また、新規パートナーの開拓を通じて適用領域を広げるとともに、秘密分散技術の特性を生かしたOEMプロダクト群の構築にも注力している。


産総研との共同研究による認知度向上、海外展開を推進

3. 秘密計算ソリューション「QueryAhead」
秘密計算ソリューションであるQueryAheadの適用領域は幅広い。金融・不動産分野における不正検知や秘匿マッチング、材料開発における企業間データ連携によるAI実験モデルの精度向上、製造・物流におけるサプライチェーン全体の最適化、ヘルスケア分野におけるDNA・疾病情報といった個人情報を含むデータの安全な共有・分析を通じた創薬や医療サービスの高度化などが挙げられる。官民含めて複数の具体的プロジェクトが進捗しており、2025〜2027年にかけてのリリースを予定している。

秘密計算市場の中でも、同社が採用する「Multi-Party Computing(MPC)」領域は急成長が見込まれており、世界市場規模は2026年に推定520〜540億ドルと、2024年の約3倍に拡大する見通しである。

成長戦略の中核は、技術的優位性の確立と市場リーダーシップの獲得である。事業化の段階では概念実証(PoC)や受託開発を通じて協業企業の事業化を支援し、将来的にはロイヤリティ収益を得るビジネスモデルの構築を目指す。

具体的な施策は、産総研との共同研究による認知度向上、第三者による安全性検証、適用領域への積極的なアプローチを掲げている。さらに、情報セキュリティ市場は海外でのニーズが高く、グローバル展開にも注力している。北米では展示会出展を通じてパートナー開拓を進め、APACではシンガポール進出を検討するほか、台湾では展示会出展を実施した。さらに欧州では、厳格な個人情報保護規制(GDPR)を背景に新たなビジネスチャンスがあると捉え、今後の市場調査を検討している。


中長期での事業領域拡大に向け高度な人材の採用を強化

4. 人材投資
同社は、持続的な成長の実現に向けて「人材投資」を重要な経営戦略の柱として位置付けており、上場時の調達資金は主に採用費及び人件費に充当する計画である。特に、ZENMU EngineやQueryAheadのOEMサービス拡充による中長期での事業領域の拡大を見据え、数学・暗号理論等に精通したエンジニアや、適用領域の市場を熟知し、事業企画・新規ビジネス立上げの経験を持つ高度な人材の確保に注力する。採用は独自性や技術的優位性を背景に順調に進んでいるが、今後は大学の研究室との連携やインターンシップの活用も検討している。

これらの施策により、事業拡大に不可欠な人的基盤を強化し、持続的な成長につなげる方針である。



■株主還元策

当面は無配を継続し、内部留保の充実と事業基盤の強化及び成長投資への充当を優先

同社は、2014年の創業以来、まだ配当を行っていない。株主への利益還元を経営上の重要な経営課題と位置付けているものの、現在は成長過程にあるため、当面は内部留保の充実を図り、事業基盤の強化と成長投資による企業価値の向上を通じて長期的な視点から株主の期待に応えていく考えである。

将来的には、各事業年度の財政状態及び経営成績を勘案しながら配当による利益還元を検討していく方針である。ただし、現時点では、配当実施の可能性及びその実施時期等については未定であり、2025年12月期の配当は予定していない。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 渡邉 俊輔)


《HN》

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