1891年に14歳でアメリカにたどり着いたとき、サミュエル・ザムライ、通称サムは、のっぽでひょろりとした一文なしの少年だった。それから69年後、ニューオーリンズ一番の豪邸で亡くなったときには、世界で最も裕福な、最強の権力を握る男のひとりになっていた。
サムは、果物師、バナナの運び屋、やり手の商売人、中央アメリカ地峡のプランテーションのオーナーと、さまざまな仕事をしてきた。絶頂期には、世界初のグローバル企業ユナイテッド・フルーツに立ち向かい、打ち勝って社長となり、電話一本で歴史の流れを変えられる重要人物となった。
サムの生涯は、アメリカが機会に満ちた国であると示す証拠でもあるが、醜いアメリカ人の古典的な例でもある。自分たちの冒険のために他国を手荒く扱う海賊企業――ラテンアメリカの人々が「ヤンキーは、家へ帰れ!」と声高に叫ぶとき、頭にあるのはサムのような人間だった。
リッチ・コーエンによる魅力あふれる歴史評伝である本書を読めば、サムが不屈の精神を持つ起業家であり、政界の隠れた実力者であり、資本主義の革命家であることがわかる。「エル・アミーゴ」「グリンゴ」、あるいは、たんに「Z」として知られるこのバナナマンの生涯は、この100年間語られることのなかった偉大な物語のひとつだ。
斑点だらけの腐ったバナナ以外何もないところから、サムは広大な帝国を築きあげた。それは、バナナ・カウボーイや傭兵部隊、ホンジュラスの小作農やCIAの諜報部員、アメリカの政治家たちの世界にまたがる大帝国だ。
サムはグローバルビジネスの先駆者であり、英雄だ。ニューオーリンズの埠頭で奮闘したかと思えば、中央アメリカの政府を転覆させ、稀代のポピュリズム政治家ヒューイ・ロングと反目したかと思えば、合衆国政府の重鎮ダレス兄弟と手を結ぶ。そして、ついにはイスラエル建国の影の立役者となった。
“バナナマン”サム・ザムライは伝説的人物で、リッチ・コーエンは稀代のストーリーテラーだ。このふたりがひとつになったとき、『アメリカ帝国』の忘れられた英雄(悪漢)の物語が、目を見張るような、愉快な調子で浮かびあがる。
――ゼブ・チャフェッツ
目次
はじめに
プロローグ
緑 Green
第1章 セルマ
第2章 完熟バナナ
第3章 果物師
第4章 茶から緑へ
第5章 バナナは木にならない
第6章 タコ
第7章 ニューオーリンズs
黄 Yellow
第8章 地峡
第9章 コリンズまで
第10章 革命しよう!
第11章 地峡往来
第12章 バナナ戦争
熟 Ripe
第13章 キングフィッシュ
第14章 クジラを食べた魚
第15章 ロス・ペリコス
第16章 バナナ、戦争へゆく
第17章 イスラエルをコシラエル
第18章 サクセス作戦
第19章 反動
茶 Brown
第20章 残されたもの
第21章 ピッグス湾
第22章 クジラを食べた魚を地球が呑み込む
第23章 通りまで最速の道
エピローグ Epilogue
情報源に関する注釈ならびに謝辞
原注
参考文献
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