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フィスコ投資ニュース配信日時: 2025/09/29 15:06, 提供元: フィスコ エージェントIGHD Research Memo(6):営業収益は100億円突破の見通し*15:06JST エージェントIGHD Research Memo(6):営業収益は100億円突破の見通し■今後の見通し ● 2025年12月期の業績見通し エージェントIGホールディングス<377A>の2025年12月期通期の連結業績は、営業収益が前期比51.2%増の12,340百万円(うち国内事業が同53.2%増の12,000百万円、海外事業が同3.9%増の340百万円)、営業利益が同85.3%増の265百万円(うち国内事業が同121.6%増の250百万円、海外事業が同50.3%減の15百万円)、経常利益が同90.9%増の255百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同162.4%増の140百万円と、増収増益の見通しである。 営業収益は、2024年12月期に買収したファイナンシャル・ジャパンの通期連結寄与及び取扱保険料の拡大などにより、前期に引き続き大幅増収局面が続くと見込まれる。特に、保険代理店のM&A及び事業承継の積極展開が順調に進んでおり、事業基盤の拡充と収益力の強化が一層進むと見込まれる。 営業利益は増収効果により大幅増益となり、営業利益率は2.1%と同0.3ポイント改善する計画である。中間期は内部管理体制の強化に向けた先行投資や一過性のコストの発生により営業損失を計上したものの、通期では既存顧客に対するアップセル・クロスセルの推進、新規顧客の開拓や事業譲受に伴う顧客基盤の拡大などにより、利益計画の達成を目指すものとしている。なお、海外事業は増収減益の計画であるが、コスト面については特殊要因があるわけではなく、やや保守的な見通しとしている模様である。 ■中長期の成長戦略 事業承継、M&A支援、IT活用、海外事業拡大により成長加速へ 1. M&A及び事業承継の推進 同社は、2025年12月期以降もM&A及び事業承継を積極的に推進し、事業規模の拡大を図る計画である。従前までと同様、保険代理店業を主とする専業代理店の取り込みを継続するとともに、今後は他事業と併せて保険販売を行う兼業代理店との協業も進める。 一部の大手中古車販売会社による保険金の水増し請求など相次ぐ不祥事を受け、兼業代理店に対する風当たりが強くなっており、金融庁により業界構造の大きな変革につながる法制度の変更などが検討される可能性もある。国内損害保険市場9.5兆円のうち、兼業代理店が5.8兆円を占めており、仮に米国のように兼業代理店が禁止となれば保険販売により一定の利益を上げている中古車販売業界やハウスメーカーなどには打撃となるが、同社のような専業代理店にとっては大きな事業機会となる可能性があるため、今後の動向に注目したい。 2. M&A総合研究所と業務提携契約を締結、新サービスを開始 同社の子会社であるエージェント・インシュアランス・グループは、2025年8月14日にM&A総合研究所と業務提携契約を締結し、中小企業の喫緊の課題である事業承継問題を包括的に解決する「M&Aサポートサービス」を開始した。中小企業においては経営者の高齢化や後継者不足が深刻化しており、後継者難から休廃業を選択せざるを得ない企業が増加している。この社会的課題を背景として、両社はM&Aを活用した新たな事業承継の支援モデルを構築する方針である。 同サービスの特徴は、第1に、M&A総合研究所が有するAIマッチング技術と経験豊富なアドバイザー陣を活用し、後継者不在や事業再編など多様なニーズに応じた迅速かつ最適なM&A戦略を実行することができる点にある。従来のM&Aプロセスよりも効率的な成約を実現することにより、時間やコスト面でM&Aを躊躇していた中小企業経営者に対して新たな選択肢を提供する。第2に、M&A成立後にはエージェント・インシュアランス・グループが保険分野を中心とした専門性を生かし、事業リスクの軽減や売却益の資産運用などのアフターサポートを提供する。これにより経営の安定化と経営者のセカンドライフ支援を実現する。第3に、両社の知見を融合させたデューデリジェンス支援やPMI(統合プロセス)における保険の見直しまでをカバーする包括的なフォローアップ体制を備えており、顧客にとって安心度の高いM&A支援を実行することができる点も強みである。 この取り組みは、従来の保険契約を基盤としたストック型ビジネスに加え、M&A仲介によるショット型ビジネスを収益源として取り込む試みの意味合いもある。同社の顧客層は事業承継ニーズを抱える売り手側の企業であることが多く、既存の長期的な保険契約によるリレーションを基点としてM&A総合研究所へ送客し、双方にとって新たな価値創出につなげるモデルの構築を目指していく。M&A支援と保険サービスを組み合わせたワンストップ型ソリューションは競合他社との差別化要素として機能すると見られ、中長期的には収益基盤の拡大が期待される。 3. テクノロジーの活用 同社は2025年1月にシステム開発サービスを提供するコスモアビリティを買収した。同社を含む保険代理店業界はデジタル化が遅延していることから、コスモアビリティが長年培ってきた知見を生かし、まずはIT活用により社内オペレーション及び営業活動の効率化を図る。その後は、保険業界及び隣接業界のマーケット開拓に資するITツールの開発などを検討している。 4. 海外事業の拡大 同社は中長期的な成長戦略の一環として海外事業の展開を加速させる方針である。特に米国市場は、日本国内の30倍を超える規模を誇る世界最大の損害保険市場であり、同社にとって極めて魅力的な成長機会となる。同市場では1件当たりの販売手数料水準が日本よりも高く、収益性の向上が期待できる点も大きな魅力である。一方で、米国においても保険ブローカーの高齢化や後継者不足が進行しており、業界構造上の課題が顕在化している。同社は日本国内で構築した「保険代理店支援プラットフォーム」の知見と実績を生かし、この課題解決に資するソリューションを米国で展開していく。足元では世界最大の保険ブローカーであるマーシュなどから多数の紹介案件が寄せられており、米国市場におけるネットワークと信頼基盤が着実に広がりつつある。海外事業を中長期的な成長ドライバーとして位置付け、事業基盤の強化と収益拡大を図っていく。 5. 持株会社体制への移行 同社は2025年7月1日に持株会社体制へ移行し、グループ経営の基盤を整備した。現行の体制では持株会社の傘下にエージェント・インシュアランス・グループが置かれ、その下に複数の子会社が連なる構造となっている。今後は2025年10月1日に予定されているグループ再編により、これらの子会社を持株会社が直接保有する形に改める計画である。これにより組織の階層を簡素化し、経営判断の迅速化とガバナンスの強化を図るねらいがある。持株会社化の背景には、機動的なM&Aや事業承継を通じて持続的成長を実現するという経営戦略がある。グループ全体でのシナジー創出を前提に、再編後の組織は資本政策や投資判断の自由度を高め、成長機会を的確に捉える体制となる。加えて、ファイナンシャル・ジャパンとの費用共通化などにより、中長期的には規模の経済を生かしたコスト削減効果も期待される。 (執筆:フィスコ客員アナリスト 吉林拓馬) 《HN》 記事一覧 |