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フィスコ投資ニュース

配信日時: 2025/07/11 11:05, 提供元: フィスコ

紀文食品 Research Memo(5):増収確保も、下期に原材料価格が上昇し減益決算

*11:05JST 紀文食品 Research Memo(5):増収確保も、下期に原材料価格が上昇し減益決算
■紀文食品<2933>の業績動向

1. 2025年3月期の業績概要
2025年3月期の業績は、売上高が108,912百万円(前期比2.2%増)、営業利益が4,513百万円(同4.4%減)、経常利益が4,191百万円(同4.6%減)、親会社株主に帰属する当期純利益が2,587百万円(同8.5%減)となった。期初予想との比較では、売上高で2,038百万円、営業利益で213百万円、経常利益で29百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で267百万円の未達となった。

日本経済は、雇用情勢や所得環境の改善により緩やかに回復した一方で、各国の通商政策や地政学的なリスク、気候変動など様々な影響による景気の下振れの懸念が高まるなど、依然として先行きに対する不透明感が続いている。このような環境下、同社は、今期スタートした中期経営計画に沿い、収益性向上と財務体質改善による「持続的成長サイクルの確立」、企業価値向上、サステナビリティ経営を目指した取り組みを推進した。

この結果、売上高は国内食品事業と食品関連事業が堅調に推移して増収を確保した。利益面では、電気料金や燃料費の上昇、商事部門での売上高構成比の上昇、人手不足による物流費の増加などはあったものの、原材料価格が安定化、合理化などによる原価改善、高採算の海外自社製品売上高構成比の上昇などもあって売上高総利益率が改善した。しかし、人件費や活動費のほか、人手不足で国内配送費、地政学リスクで海上運賃が上昇したことで販管費が増加、営業利益は減益となった。同社は、主力商品であるスリミ製品や惣菜の需要が秋季及び冬季に高まること、12月におせち料理関連商品の売上高が集中することにより、第3四半期に売上高や営業利益が集中する傾向にあるが、特に下期に入って月を追って原材料価格が上昇傾向となり、上期の好業績を持続できなかった。なお、期初予想との比較で売上高が未達になったのは、メーカー間の店頭での価格競争激化、春季及び夏季の高気温による国内食品事業の販売減少、海外各国の経済停滞の影響が要因である。営業利益の未達は海外食品事業の低迷、親会社株主に帰属する当期純利益の未達は法定実効税率改定に伴う税金費用の増加が要因である。

2. セグメント別の業績動向
セグメント別の業績は、国内食品事業が売上高76,982百万円(前期比1.2%増)、セグメント利益2,466百万円(同15.5%減)、海外食品事業が売上高11,790百万円(同0.3%減)、セグメント利益958百万円(同20.6%増)、食品関連事業が売上高20,139百万円(同8.2%増)、セグメント利益1,227百万円(同23.8%増)となり、売上高は海外食品事業の不振を国内食品事業と食品関連事業でカバーしたが、セグメント利益は国内食品事業の減益をその他2事業の増益でカバーできなかった。

国内食品事業の小売部門の売上高は、消費者の節約志向の高まりやメーカー間の価格競争の激化、春季から夏季の高気温続きにより、主力のスリミ製品が若干前年を下回った。コロナ禍明けの健康志向が一巡し競争環境の厳しくなった麺状商品も減収となった。しかし、SNSや店頭告知、レシピ本の発行、カプセルトイへの採用などのプロモーションを展開し、はんぺんやカニカマは堅調に推移。中華惣菜や「パリパリポテト」、「切れてる厚焼玉子」なども好調に推移し、小売部門全体で増収を確保した。商事部門では、水産物、大豆、米糠油など輸入農産物が順調に伸長した。なお、四半期が進むにつれ、原材料価格の上昇傾向が強まり、足もとでは価格競争は緩和してきた模様である。一方、主原料のすり身価格は期末に向けて上昇を続け、また副原料・資材、エネルギーなどの価格上昇や、物流費や人件費、広告宣伝費、販売促進費の増加の影響を受けたこと、相対的に低採算の商事部門の売上高が好調だったため事業ミックスが悪化したことなどにより、セグメント利益は減益となった。期初予想との比較では、スリミ製品の売上高が想定に届かなかったが、原材料高はある程度想定どおりだったため、セグメント利益はほぼ予想どおりの着地となった。

海外食品事業の売上高は、各国市場で濃淡はあるが、景気悪化やインフレの影響を受けて消費者の節約志向が高まり、ミドルレンジの同社商品にとって厳しい環境だった。そのような環境下、米国やタイでは、カニカマやおでんセットなどスリミ製品、TAKOYAKIや納豆、大福などの日本食材の販売が拡大した。しかし、米国において、糖質を制限するダイエットブームの一巡や大手スーパーが政策的に店頭での品数を減らした影響でHealthy Noodle(糖質0g麺)の販売が減少、加えて円安の影響を受け農畜産物の輸出も減少となった。中国では、和食チェーン店向けにカニカマやはんぺんの導入が進んだうえ、各地の問屋を活かす流通施策が奏功したが、全体的には景気低迷が続いて業務用が引き続き厳しかった。このため、セグメント売上高は減収となった。セグメント利益は、スリミ製品を中心に付加価値の高い自社製品の取り扱い増により2ケタ増益となった。期初予想との比較では、インフレによる想定以上の景気悪化などにより売上高、セグメント利益ともに未達となった。なお、為替の影響は売上高で805百万円、セグメント利益で68百万円のプラス貢献だった。

食品関連事業の売上高は、主力の物流事業が、価格改定や注力を続けてきた新規顧客の獲得、高温が継続し小売店店頭で冷やし中華など夏型商品を販売延長したことや顧客側の商品販促策による既存顧客の物量増加及び配送エリア拡大などにより非常に好調に推移。グループ外への売上高構成比も77.2%(前期比1.0ポイント上昇)となった。なお、物流の2024年問題が注目され、夏季の暑さが毎年増すなか、解決策として同社のチルド共同配送がクローズアップされているため、同社はチルドの物流センターへの投資を徐々に増やしている。情報事業では、自社工場で培った、過度な設備追加をせずに高いセキュリティレベルで入退室管理の仕組みを導入できる「虹彩認証・入退出システム」などシステム商品の販売が好調だった。利益面では、人件費や輸送全般における諸々のコスト増などがマイナス要因となった一方、価格改定や物量増に加え、配送コースの組み替えや積載効率の向上、機械化の推進などにより利益率が改善、セグメント利益は2ケタ増となった。期初予想との比較でも、売上高、セグメント利益ともに過達となった。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)


《HN》

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