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フィスコ投資ニュース配信日時: 2025/09/29 15:03, 提供元: フィスコ エージェントIGHD Research Memo(3):損害保険を中心に、安定的な収益構造を確立*15:03JST エージェントIGHD Research Memo(3):損害保険を中心に、安定的な収益構造を確立■事業概要 1. 事業概要 エージェントIGホールディングス<377A>の2024年12月期の事業別営業収益構成比は主力の国内事業が96.0%(国内事業内訳:損害保険23.2%、生命保険76.8%)、海外事業が4.0%となった。国内事業は個人及び法人顧客向けに損害保険及び生命保険を販売する保険代理店業を手掛けている。保険会社が様々な保険商品を設計するメーカーとしての役割であるのに対し、同社グループは保険代理店として顧客ニーズに合った商品を第三者の立場で選択・提案し、保険会社に代わって販売する。一方、海外事業は、連結子会社のAgent America, Inc.が世界最大の保険市場である米国で4拠点(カリフォルニア州2拠点、テキサス州1拠点、ジョージア州1拠点)を展開し、主に現地に進出している日系企業や米国駐在員を対象に保険代理店及び保険ブローカー業を行っている。米国は連邦法に加えて、各州で固有の法律があり、保険事業を行う際には各州でライセンスを取得しなければならないが、Agent Americaは米国39州(ほか1特別区)でライセンスを取得しているのが強みで、州をまたいで事業展開する顧客に対応できる。海外事業の売上収益のうち8割以上を損害保険による手数料収入が占めている。 同社は、ストック収益の要素が高い損害保険を中心に、フロー収益の要素が高い生命保険もバランスよく取り入れた安定的な収益構造を確立している。損害保険と生命保険は収益構造が異なっており、生命保険は契約を獲得した年に初年度手数料を得て、次年度以降は継続手数料として初年度より低い手数料率で4〜10年間得るフロー型ビジネス(一時払商品の場合、継続手数料は発生しない)であるのに対し、損害保険はその多くが1年もしくは数年ごとに契約を更新し、その都度手数料が得られるストック型ビジネスである。損害保険は、高い更新率(同社の主力商品である東京海上日動火災保険の2024年度自動車保険更新率は94.7%)を維持すれば、翌年以降も継続して同水準の保険料に対する手数料収入が安定的に得られる。また、同社は来店型店舗を展開せず、損害保険の更新を接点とした訪問型(対面またはオンライン)の営業スタイルをとっており、ローコストオペレーション体制を実現している。なお、保険代理店業界の大手としては、生命保険代理店では業界最大手のほけんの窓口グループ(株)(伊藤忠商事<8001>が大株主)、FPパートナー<7388>、「保険市場」を展開するアドバンスクリエイト<8798>、アイリックコーポレーション<7325>などが挙げられる。一方、損害保険を収益の主軸とした保険代理店では同社のほか光通信<9435>のグループ会社である(株)E保険プランニングがある。同社の取扱保険料は損害保険337億円、生命保険1,121億円(2024年12月期)、E保険プランニングの取扱保険料は損害保険が200億円、生命保険が100億円(2024年3月時点)となっている。 2. 市場環境 保険業界の国内市場規模は、生命保険が42.9兆円(2023年度、保険料等収入ベース)、損害保険は9.6兆円(2024年度、正味保険料ベース)であった。生命保険は損害保険の4倍超で、かつ米国、中国に次ぐ第3位の規模である。国策の影響で、NISAやiDeCoなどをはじめとした投資に興味を持った人も多く、国内の生命保険市場規模は拡大している。損害保険市場も、近年増加傾向にある天災リスクやサイバーリスク等により毎年その規模が拡大基調である。 国内の損害保険市場規模は拡大傾向が続く一方で、損害保険代理店数は1999年度以降大幅に減少しており、2025年3月時点では14.0万店となった。今後も減少傾向が続くと見られているが、これは保険代理店に求められる募集品質レベルや管理体制等の高度化、保険代理店事業主及び従業員の高齢化問題(代理店店主の年齢のうち50歳以上は75.5%、60歳以上は40.6%)が背景にある。 このような市場環境の下、同社は後継者不足などから存続が困難である保険代理店及び保険募集人をパートナー社員もしくは勤務型代理店として受け入れる「保険代理店支援プラットフォーム」を展開している。具体的には、営業・事務両面からのサポートとして、週1回の面談による業務フォロー、定期勉強会やe-learningを活用した研修支援、FP(ファイナンシャル・プランナー)資格を持った社員の営業同行支援等を通じて、保険業法や各保険会社の規則に則った業務の継続をサポートし、合流したパートナー社員もしくは勤務型代理店が「あんしん」して働ける環境を創出している。 3. 手数料ポイント制度 手数料ポイント制度とは、損害保険代理店の主な収益源である損害保険会社からの手数料率が、損害保険会社が定める基準によって変動する制度のことである。全国商工新聞によると、同制度導入前は一定の基準を満たせば一律20%前後の手数料が相場であったが、ポイント制度の導入によって20〜111のポイント格差が生じるようになった。一例を挙げると、保険料10万円の自動車保険を販売した場合、同制度導入前は20%の20,000円が代理店に手数料として支払われた。一方、同制度導入後は、ポイントが20であれば手数料は4,000円、100であれば20,000円、111であれば22,200円と大きく変動する。 手数料ポイントが収益に直結するため、いかにポイントを高めるかが重要であり、従来は、代理店の規模(年間の収入保険料)と前年対比の増収率がポイント決定の大きな要因であり、これに代理店のグレードに応じた認定ランクや業務品質、専属性(自社損害保険のシェア)、損害率、各損害保険会社が推進する施策の達成率など、様々な要素が上乗せされ手数料ポイントが決まっていた。しかし、一部の大手中古車販売会社による保険金の水増し請求など相次ぐ不祥事を受け、金融庁が開催した「損害保険業の構造的課題と競争のあり方に関する有識者会議」において2024年6月25日に発表された報告書によれば、損害保険会社においては、今後保険代理店の不適切な保険募集のインセンティブを与えぬよう、ポイント制度について「規模・増収」に偏ることなく、「業務品質」を重視する評価体系の検討が求められる、とされている。同社は、引き続き業務品質レベルを高めることで、手数料ポイントの獲得が難しい中小規模代理店を中心に、M&A及び事業承継を通じて全体の収益を最大化していく。 また同社は、東京海上日動火災保険をはじめとした各損害保険会社に対して事業承継のための営業活動を積極的に行い、事業承継を必要とする中小規模代理店の紹介を受けている。株式上場により知名度が向上し、代理店が同社に直接問い合わせるケースも増えているようだ。金融庁有識者会議及びその後の金融審議会の報告書を受けて、仮に法改正や監督指針改正等が行われた場合は、代理店の大規模化や効率化がどのように進むかが注目される。 なお、従来は同社がM&A及び事業承継した保険代理店の1件当たり取扱保険料は平均2,000〜3,000万円だったが、最近では数億円規模の代理店からの相談も増えているようだ。同社への事業承継元はこれまで保険代理店業を専業とする専業代理店が大半を占めていたが、今後はより規模が大きく、数も多い兼業代理店(自動車ディーラーや不動産業者など他の事業とあわせて保険販売を行う)のM&A及び事業承継も推進する方針だ。 (執筆:フィスコ客員アナリスト 吉林拓馬) 《HN》 記事一覧 |